「市(いち)に虎あり」の喩え。
今から二千年以上の昔、中国の魏(ぎ)の国に、「ホウソウ」という人物がいた。
ホウソウは、魏の国王に仕えていたが、優秀故に恨みや妬みも多かった。
あるとき、ホウソウが魏国を留守にすることになった。ホウソウは、王と次のような会話をする。
「もし、一人の者が“市場(いちば)に虎が出た”と言ったら、王様は信じますか?」
「市場に虎だと?まさか、あるはずはない」
「では、二人の者が“市場に虎が出た”と言ったらどうでしょう」
「もしや、そんなこともあるかもしれぬと疑うであろう」
「それでは、三人の者が“市場に虎が出た”と告げたらいかがでしょう」
「三人までが、そのように言うのであれば信じるであろう」
この対話において、ホウソウは、魏の王に教える。
「王よ、市場に過去、虎が出たことはありません。虎の住む森もない。虎などいるはずがないのです。
私が留守の間、悪い噂を流すものは三人どころではないでしょう。どうか、悪い噂を信じられませぬよう」
果たして、このホウソウの心配は的中する。
王は、様々な悪い噂を信じ、ホウソウが帰国するときには、すっかり考え方が変わっていた。
結果、優秀な人材であったホウソウであるが、王は二度と用いることはなかった。
以上の故事は、“実在しないことでも、多くの人が口にすれば真実だと信じるようになる”との意味で、
「市(いち)に虎有り」、「三人虎を成す」という成語となった。